忍者ブログ
こどもについて感じること・考えること、思うこと。
[7]  [6]  [5]  [4]  [3]  [2]  [1
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

PTAは任意団体である。多くの学校で、子どもが入学したらその保護者は自動的に入会したことになって「会員」になってしまい、会員は「やらなければならない」という意識を持っているのが現状だけれど、本来は自分の意思で入会した会員から構成されるべきボランティア団体である。自動加入という慣習を廃し、PTAが任意団体であることを周知させ、きちんと入会の意思確認をして加入する制度に改めようという動きが、少しずつではあるが各地で起きはじめている(朝日新聞, 2012)。

これは、正しい。その通り!!である。
その方向へ活動している方々を、私はとってもリスペクトしている。

私の所属するPTAでも、自動加入になっている。任意団体としては明らかに間違っている。でも、私は……自分の学校で任意加入を推し進めるべく活動しなかったし、今のところするつもりもない。

理由を一言で言えば、「コストに見合う成果が得られる見込みがない。現在より悪い結果を生む可能性すらある」と思うから。

コストがかかるのは間違いない。一人の賛同者も得ていない状況からスタートして、執行部を説得し、動かそうとするならば、言い出しっぺにかかる苦労は相当なものになるだろうことは容易に想像できる(注1)。「それが正しいから」というだけでは人は動かない。ここが軽々クリア、ならやってみる価値はあるけれど、楽々ではないから、じゃあ、それだけやる価値があるのか、と考えないといけない。そこで、考えてみると……

苦労して任意加入制を導入したとして、おそらく、現状では、うちの学校ではほぼ全員加入するだろうという気がする(じっさいにやってみていないので何とも言えないといえばいえないというのは承知です)。川端(2007)によると、杉並区では自由加入を原則として入会は申込み制となっているが、100%の家庭が加入するという。2011年度に任意加入を周知させた岡山市立西小学校でも、加入率は95%と高い(川端, 2011)。私の居住する区では、実は教育委員会作成の冊子に加入が自由であることが明示してある(注2)。でも、私が任意加入について会話したことのある約40人の役員経験者のうち、そのことを認識していた人は0人。その冊子を見せても、「あっそう。」くらいで、ほとんど反応はなかった。任意加入であろうがなかろうが、実際には変わりないという意識を持っているからだろう。ちなみに、今年(2012年)の入学式で、PTA会長が保護者に向けたあいさつの中で、「PTAは任意加入の団体ですが、多数の参加者を期待しています」と言明したが、全家庭が会費を支払った。

整理して考えてみよう。任意加入を周知したとして、加入する保護者は……
(1) 現行のPTAに満足していて、自分も活動したいと思っている保護者
(2) 現行のPTAには満足していないが、何らかの学校に関わる活動はしたい保護者
(3) 「みんな入るから」「入らないと何があるかわからない」「会費を出さないのは後ろめたい」といった消極的理由や、本当は入らなきゃいけないのだろうと誤解している保護者
(4) あまりに学校やPTAに関心がなく、任意加入だという情報を手に入れていない保護者

印象だけれど、(1)のような「自分の」判断ができる人が、それほどいるとは思えない。(3)が圧倒的なのではないだろうか。任意加入が周知されたところで、現行の「PTA」という看板を背負っている限り、心理的容易さは入会することに高く、入会しないことに低い状況が変わるとは思えない。何かの拍子に非加入者が3割を超えれば、なだれうつように逆転する可能性はあるかもしれないが、とにかく長いものに巻かれる傾向は強い。

少なくとも私の所属するPTAでは、長い時間をかけて少しずつ「改善」して委員の活動は「負担軽減」していっており、多くの人が不満を抱えながらも、「助け合って」消極的に制度の維持に加担し、問題は見えづらい形に収められている。だからこそ「活動が『負担』と呼ばれること自体おかしい」なんて言う私は、ほとんど何も変えられずにはがゆい思いをしている。

ちなみに、自分の入学時に任意加入が周知されていたとして、自分は入会しただろうかと考えたら、(2)の理由で入会したと思う。いくら自分が忙しく、現行のPTA活動に問題があろうと、一部の活動を拒否したいとは思っても、入会自体をしない判断は、自分はしないだろうと思う。委員や役員の経験を通してよほど嫌な思いをした後ならば退会するかもしれないけれど、子どもが通う学校に対して、自分にできる手助けはしたいと思うし、保護者同士の関わりも持ちたいと思う。他に保護者団体がない以上、PTAへの入会/非入会というゼロイチの選択を迫られたら、入会「するしかない」という気持になり、入会すれば委員や役員の負担、納得のいかない活動内容等の問題に苦しむことになる。入ってからぶつかる数々の問題は、入り口が任意だろうが強制だろうが変わりない。入退会の自由は、PTAにまつわる数多くの問題を象徴するものであり、それを変えることにはロマンを感じてしまう。けれど、その先にある一つ一つの問題に対処する魔法の力は当然ながら持っていない。あくまで一つ一つ、言葉を尽くして時間をかけて気持をすり減らしながら闘って変えていくしかない。

任意加入になれば、理解を得にくい活動は淘汰されるという期待はあるけれど、それは、入会が任意であるだけでは起こらない。一定数の家庭が自主的な判断のもとに非入会を選び、かつ、(2)理由の加入家庭が(できれば非加入家庭も)改善のために声をあげてくれなければ何も変わらないのだ。やはり改革には今と同じ困難―—主張できる人材の乏しさ―—があるわけだ。

では、加入しないのはどのような保護者だろうと想像すると……
(1) 加入したいかしたくないかを考えて自主的に加入しないことに決めた保護者(理由はいろいろあり得る)。
(2) 経済的に苦しく会費を払うことがままならない保護者
(3) シングルペアレントであったり、病気、介護等の理由で時間的余裕がなく、既存のPTA活動に参加できず「他の会員に迷惑をかけている」「肩身が狭い」と感じている保護者
(4) 学校に関心のない、または学校を嫌っている保護者
(5) 虐待している、またはそれに近いほど子どもに関心のない保護者

根拠がゆるいのは否定できないけれど、私は、(1)の家庭はごく少ないと想像している。日本の・今の・小学生の保護者(特に母親)のなかで、非加入の決断をし、そのうえ少数派であることのリスクを引き受けて自律的であろうとする人、それだけの表現ができる人はほとんどいないだろう。それができる人ならば、すでに自主的に退会しているのではないかと思う(注3)。むしろ(2)(3)のような、今までも少数派であった家庭が、「身を引く」形で加入を見送り、その結果、さらに学校から遠ざかることになってしまったり、(4)(5)のような保護者の利益に与することになってしまうのではないか……と私は考えてしまう。

(2)~(6)のような家庭は学校と、あるいは保護者同士でつながっていることがとくに子どもにとって役に立つ可能性のある家庭である。意図せずともこれらを排除することになってしまってはいけない。PTAに入らないことで、保護者会や授業参観といった機会にも学校に来ることが心理的に負担になってしまったりして、より孤立してしまうことはじゅうぶんあり得ると思う。そんなネガティブな結果を招く可能性を、任意加入の徹底ははらんでいないだろうか?

非加入家庭がマイノリティである限り(そしてそれは間違いないと思う)、自律的に非加入を選べる家庭は少なく、活動を変えるといったポジティブな結果を生む可能性は低くなる。今、全員加入のPTAにある「あの人は委員をやらなくてずるい」というような相互監視の視線は、単に「あの人は加入してなくてずるい」という視線にシフトする。「非加入」という差別のレッテルだって生まれるかもしれない。

任意加入の実現を目指している方々は、PTAについての見識からも分かるようにある程度の知識や思考力があり、少数派になったとしても自分の判断で行動できる程度に自信のある人物だと思う(だからこそ、リスペクトしてる)。社会的強者と言ってもいい。そして、いろんな保護者と対話していれば、自分の「特殊さ」には気がついているんじゃないかと思う。どれほど多くの人が、長いものに巻かれたがり、消極的判断しか下さないか。少数派であっても意見を表明できる人が特殊でなくならない限り、トップダウンで制度を変えてもよい結果が生まれるという楽観は私にはできない。

だから、任意なんだよ、ということは、機会があるごとに、おしゃべりの範囲で言いふらしてはいくけど、組織を動かすようがんばるのは、私はやらない。

(注1) 具体的な例として、moepapa氏が体験した「PTA入退会自由へのバッシング」の記録。

(注2) 
江戸川区教育委員会(2010)に、「PTAは『子どもたちの健全な育成』を目指して自主的に組織された任意の団体です。会員は自由加入が原則です。学校の後援団体でも付属機関でもありません。民主的に運営され、他の団体の支配や統制、干渉を受けることはありません。」とある。

(注3) 退会することに法的な障害はないのだから、退会しようと思えば主張さえすればできるはず。なお、私の所属するPTAで少なくとも最近4年間の間(のべ約1000家庭)に、退会を言明した家庭はない。

文献
moepapa (2012) PTA入退会自由へのバッシング シングルパパはPTA会長 2012年4月1日 http://blog.livedoor.jp/moepapa516-pta/archives/53573274.html#more (最終閲覧日2012年6月9日)
江戸川区教育委員会(2010) すすめ!PTA PTAのすすめ~活動の参考に~ p. 1
朝日新聞(2012) どうする?PTA<上>「入退会は自由」 1月15日朝刊
川端裕人(2011) 校長のためのPTA学入門 第6回 月刊プリンシパル, 9月号 pp. 58-59
川端裕人(2007) PTA再活用論 中央公論新社
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
はじめまして
おざわさん、はじめまして。
ここのところ、PTA問題について考えたりじたばたと行動を起こしたりしている者です。
御エントリ、数か月前に拝読し、自分が抱えているPTA問題に対する葛藤を、きれいに言語化していらっしゃる!と、いたく感心いたしました。

ひょんなことで、この度、再読し、いささか腑に落ちなかった点がありますので、質問させてください。

>「活動が『負担』と呼ばれること自体おかしい」

とおっしゃる、その意図はどういうことでしょうか?

御校のPTA活動が軽減されているから、活動が「負担」にはならないとか、同じ役割を、Aさんは軽々とこなしてしまうけど、Bさんにとっては負担である、ことを指すのではない気がします。
むしろ、PTAの理念を理解していないから、活動を「負担」ととらえてしまう、というような気がしてきました。
どうぞよろしくお願いします。
猫紫紺 URL 2012/09/16(Sun)23:00:57 編集
Re:はじめまして
猫紫紺さん

PTAについて勉強をはじめてから、ちょくちょくお名前拝見しておりました。読んでいただいてうれしいです。

さて、問題の件ですが……
>PTAの理念を理解していないから、活動を「負担」ととらえてしまう

私の意図したのはそのとおりのことです。
私のなかでは、「負担」という言葉は、受け身的でネガティブなイメージがあります(猫紫紺さんがブログで使っていた「負荷」という言葉のほうがニュートラルなイメージです)。PTA活動はほんらい自主的なもの、自ら望んで積極的に取り組むものなのに、はなから活動を「負担」と捉えて、「負担軽減」を図るというスタンスそのものが間違っているのでは、と考えた次第です。

ただ、猫紫紺さんのコメントを拝見してから、自ら進んでやっていることであっても負担にはなりえるんだということに気づきました。その意味では極端な言い方だったかなと思います、「活動が『負担』であることを前提とすること自体がおかしい」と直したいです。

こんな説明で解っていただけたでしょうか……?
つっこんでいただいたことで、自分の考えや表現を考え直すことができて、ありがたいです。

今後ともよろしくお願いします!
おざわゆきこ 2012/09/17(Mon)21:33:57 編集
ありがとうございます
おざわさん、こんにちは。
名前を憶えていただいており、うれしはずかし、です。

質問に対し、早速のご回答ありがとうございます。おかげさまで、すっきりいたしました^^

>自ら進んでやっていることであっても負担にはなりえるんだ
とのご指摘ですが、まさにそうなんです。特に、本部役員を引き受けると、予想もつかたなかった仕事が次々と「降って」きます。P連、行政、学校からの、要請は多岐にわたる内容です。これらは、全校配布の運営委員会だより内「活動報告」欄や、役員選出時の配布資料に、それなりに記載しているのですが…、受け手のリテラシーが足りずに、その意味するところが分からなかったりします。
そもそもボランティアなので、どこまでやればいいのか、という線があいまいですし、人によっても基準が違います。

PTA問題は、調べれば調べるほど、深みにはまってしまいます。仕組みの面から言っても、組織運営の面から言っても、かかわる個々人の問題から言っても。

これからもよろしくお願いします。
猫紫紺 2012/09/18(Tue)14:55:37 編集
カレンダー
09 2017/10 11
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
フリーエリア
リンク
最新コメント
[09/18 猫紫紺]
[09/17 おざわゆきこ]
[09/16 猫紫紺]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
おざわゆきこ
性別:
女性
職業:
主婦と作家
バーコード
ブログ内検索
カウンター
books
自分が関わった本たち
books
オススメ・お気に入りの本たち
忍者ブログ [PR]