こどもについて感じること・考えること、思うこと。
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東京都PTA連合会の広報紙が手元に届きました。会長あいさつの冒頭が目に入って、つい真剣に読んでしましました。すると、つっこみどころが満載。これは何か言わねばならない……という義務感にかられてしまいました。
私が主につっこみたいところは2点あるので、2つの記事に分けて書きます。
最初にお断りしておきたいのですが、私はこの記事を書いた方を個人的に攻撃するつもりはありません。書かれていることは実によく見聞きするタイプの内容で、だからこそ私はこの文章を代表としてとりあげたいのです。また、文章としてもよく書けています。収入にもならないのに、きっと時間をかけて書いたのだろうなあ……(涙)。ただ……とっても空疎です。よくこんな空疎なことをこれだけの文字数書けたなあと、そのことに敬意を表したい気持ちです。
さて、ひとつめは、「根拠がない」問題です。
私が引き込まれたその冒頭とは……
「昨今、子供にまつわる事件が多発してしまい、報道を見るのが辛く、心痛みます。いじめ、虐待、連れ去り等子供の安全にかかわる事件。日本という国は一体どうなってしまったのだろう、これからどうなっていくのだろうと、大きな不安を覚えます。」(以下、引用は「PTA東京」第24−1号です)
お天気の話まではいかなくても、実によく口にされるタイプの言説です。確かに子どもが被害者となった事件の報道は辛く、一件もなくなってほしいものではあります。でも、その不安は事実をとはかけはなれています。だって、他殺される子供の数は今の親世代が子どもだったころに比べて激減しているのです(管賀, 2012)(河合, 2006; 浜田・芹沢, 2004なども参照してください)。
さて、その後、子供の安全について話が進むのかと思いきや、
「今の時代、目先のもの、表面的なことに目を奪われるのではなく……」
と、子供につけさせたい5つの「力」の説明に移ってしまいます。あれっ? ああそうか、「子供関連事件の多発」というのは本当に「時候の挨拶」の役割を果たしているのだな,と納得しました。
ちなみに,それらの「力」の一つとして、「感覚的感情的に流されるのではなく『論理的に自ら主体性を持って考え、俯瞰的に観る』力」が求められています。
このことには大いに賛成です。「子供をめぐる事件が多発している」という感覚的捉え方、「大きな不安を覚える」と言って解決策は考えない感情的な物言いはやめてほしいものです。
その後、それらの力をつけられない原因として「自分病」に侵されているのだという話になります。そして、楽しようとせずに「私たちは、あえて、そうでないからこそ得られる“力”や“感動”、“自己成長”の素晴らしさを、強く認識せねばならない」と主張します。
想定する原因も根拠なく、目指すところも特定の感情状態にすぎないエンディングでした。「論理的に考える」が全くできていないという点で、子どもの見本になってほしくない文章です。モトになる事実の認識が間違ってるんだから考えられるはずがないんです。(ちなみに、現代の子どもたちは「自分病」からはほど遠い存在だという話もあります……(土井, 2008など))
とはいえ、私がわざわざこんなつっこみをするのは、単なる文章力とかの問題ではありません。子どものことを扱っている以上、書いたことから子どもへの影響がないとはいえないのです。子どもが狙われる犯罪が多くなっていると誤解したら、それを元に、過剰に子どもを囲い込んで自然な成長を疎外する可能性があります。最近の子どもが自分中心的だと誤解したら、子どもを必要以上に厳しくしつけようとして自己肯定感を損ねたりする可能性があります。子どもに悪影響を及ぼす可能性がある以上、子どもに関する物言いには注意深くなってほしいと思うのです。事実確認くらい、しましょう。ね。
<引用文献>
PTA東京(2012) 第24−1号 東京都小学校PTA協議会
管賀江留郎(2012) 幼児他殺被害者数統計 (http://kangaeru.s59.xrea.com/ G-Tasatu.htm) 少年犯罪データベース(http://kangaeru.s59.xrea.com/) (最終閲覧日2012.12.19)
河合幹雄(2004) 安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学 岩波書店
浜井 浩一・芹沢 一也(2006) 犯罪不安社会 誰もが「不審者」? 光文社
土井 隆義(2008)友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル 筑摩書房
私が主につっこみたいところは2点あるので、2つの記事に分けて書きます。
最初にお断りしておきたいのですが、私はこの記事を書いた方を個人的に攻撃するつもりはありません。書かれていることは実によく見聞きするタイプの内容で、だからこそ私はこの文章を代表としてとりあげたいのです。また、文章としてもよく書けています。収入にもならないのに、きっと時間をかけて書いたのだろうなあ……(涙)。ただ……とっても空疎です。よくこんな空疎なことをこれだけの文字数書けたなあと、そのことに敬意を表したい気持ちです。
さて、ひとつめは、「根拠がない」問題です。
私が引き込まれたその冒頭とは……
「昨今、子供にまつわる事件が多発してしまい、報道を見るのが辛く、心痛みます。いじめ、虐待、連れ去り等子供の安全にかかわる事件。日本という国は一体どうなってしまったのだろう、これからどうなっていくのだろうと、大きな不安を覚えます。」(以下、引用は「PTA東京」第24−1号です)
お天気の話まではいかなくても、実によく口にされるタイプの言説です。確かに子どもが被害者となった事件の報道は辛く、一件もなくなってほしいものではあります。でも、その不安は事実をとはかけはなれています。だって、他殺される子供の数は今の親世代が子どもだったころに比べて激減しているのです(管賀, 2012)(河合, 2006; 浜田・芹沢, 2004なども参照してください)。
さて、その後、子供の安全について話が進むのかと思いきや、
「今の時代、目先のもの、表面的なことに目を奪われるのではなく……」
と、子供につけさせたい5つの「力」の説明に移ってしまいます。あれっ? ああそうか、「子供関連事件の多発」というのは本当に「時候の挨拶」の役割を果たしているのだな,と納得しました。
ちなみに,それらの「力」の一つとして、「感覚的感情的に流されるのではなく『論理的に自ら主体性を持って考え、俯瞰的に観る』力」が求められています。
このことには大いに賛成です。「子供をめぐる事件が多発している」という感覚的捉え方、「大きな不安を覚える」と言って解決策は考えない感情的な物言いはやめてほしいものです。
その後、それらの力をつけられない原因として「自分病」に侵されているのだという話になります。そして、楽しようとせずに「私たちは、あえて、そうでないからこそ得られる“力”や“感動”、“自己成長”の素晴らしさを、強く認識せねばならない」と主張します。
想定する原因も根拠なく、目指すところも特定の感情状態にすぎないエンディングでした。「論理的に考える」が全くできていないという点で、子どもの見本になってほしくない文章です。モトになる事実の認識が間違ってるんだから考えられるはずがないんです。(ちなみに、現代の子どもたちは「自分病」からはほど遠い存在だという話もあります……(土井, 2008など))
とはいえ、私がわざわざこんなつっこみをするのは、単なる文章力とかの問題ではありません。子どものことを扱っている以上、書いたことから子どもへの影響がないとはいえないのです。子どもが狙われる犯罪が多くなっていると誤解したら、それを元に、過剰に子どもを囲い込んで自然な成長を疎外する可能性があります。最近の子どもが自分中心的だと誤解したら、子どもを必要以上に厳しくしつけようとして自己肯定感を損ねたりする可能性があります。子どもに悪影響を及ぼす可能性がある以上、子どもに関する物言いには注意深くなってほしいと思うのです。事実確認くらい、しましょう。ね。
<引用文献>
PTA東京(2012) 第24−1号 東京都小学校PTA協議会
管賀江留郎(2012) 幼児他殺被害者数統計 (http://kangaeru.s59.xrea.com/ G-Tasatu.htm) 少年犯罪データベース(http://kangaeru.s59.xrea.com/) (最終閲覧日2012.12.19)
河合幹雄(2004) 安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学 岩波書店
浜井 浩一・芹沢 一也(2006) 犯罪不安社会 誰もが「不審者」? 光文社
土井 隆義(2008)友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル 筑摩書房
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